遺跡発掘について
澤浦亮平
沖縄県立博物館・美術館 学芸員
経験豊富!期待の若手
青森県で港川人と同じ時代の発掘調査に長年携わり、2018年からサキタリ洞発掘調査に参加
澤浦亮平
沖縄県立博物館・美術館 学芸員
経験豊富!期待の若手
青森県で港川人と同じ時代の発掘調査に長年携わり、2018年からサキタリ洞発掘調査に参加
とても細かく丁寧に発掘している現場です。約2m×3mの範囲を10年以上かけて取り組んでいる現場は他にありません。それだけ貴重なものがたくさん発掘されているということですね。また、作業している後ろを観光のお客様が通り、ツアーガイドが発掘の解説をするという状況も、他にはない特徴です。学生時代から発掘調査に携わっていますが、発掘作業中に一般の方から「何を掘っているんですか?」と話しかけられる現場は初めてで、すごく新鮮でした。声をかけてもらえるのは嬉しいですね。興味を持ってもらえると励みになります。
沖縄と本土では、出てくる遺物の種類が違います。本土には旧石器時代の遺跡が1万カ所以上もありますが、人骨が出たのは1カ所だけ。沖縄には10カ所近く人類化石が出る遺跡があります。また、本土では石で作った道具がたくさん出ますが、昔の人たちが食べたものの食べかすはほとんど出てきません。酸性土壌なので保存されにくいんです。沖縄は琉球石灰岩が広く分布しているので古い時代のものも残りやすく、サキタリ洞ではカニのはさみやウナギの骨などが出ています。2~3万年前の人たちが食べていたものの痕跡が残っているので、生活の様子が分かり研究の幅が広がります。
古い時代の文化ほど普遍的なものなので、知れば知るほど面白いなと思います。遠く離れた地域や異なる時代の遺跡から、サキタリ洞と共通した道具の使い方が見えてくるなど、人類の文化の根っこのような部分に触れることができるのが旧石器時代を研究する魅力だと思います。また、古代の人たちは意外にも逞しくしなやかな発想力を持ち、地域に適応しています。その知恵や感性に触れることで、自然との付き合い方など過去から学ぶこともたくさんあります。
現場展示やリアリティにこだわった方法で伝えたいですね。10年以上ガンガラーの谷で行っている発掘調査の成果を、わかりやすく現場に展示し多くの人に見てもらいたい。ガンガラーの谷はコースの中で2500年前の石棺墓や発掘調査中の現場を見ることができる、フィールドミュージアムのようなもの。発掘した遺物のレプリカや生活痕跡を洞窟の中に配置したら、古代人がこの谷で暮らしていた様子が明確にイメージできて面白いんじゃないかなと思います。
取材日2021年3月16日